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Making-of the webinar

今回行っておりますZoomでのwebinarの裏側をお伝えしようと思います。どんな機材を使っているか、どうやって放送しているのか、興味がある方もいらっしゃると思いますので。ちょっと今回はこれまでの服の話とは異なる内容になります。専門的な話もございますが、もしより深く知りたい場合はお問い合わせからお尋ねください。

全体の構成

まず、スタッフは総勢4名います。カメラ、パソコン操作、作業の手伝い、その他照明調整等を行っています。特に、カメラを手持ちで操作するために一人、映像を切り替えるためのパソコン操作に一人は必要です。

機材の説明を図にしました。カメラ2台とマイク1台、デスクライト4台と全体を照らすライト1台です。webcam1は上から見た映像、webcam2は基本的に手持ちで自由に狙って撮っています。

カメラについて

カメラはいろいろ検討しましたが、今回はlogicoolのC920nを2台使っています。

これは1080p,30fpsで撮影できるので、Zoomでのwebinarでは十分なスペックだと思います。今回は別にマイクを用意していますが、音質も人の話し声を取るには十分な性能です。なお、Zoomでは高画質で撮影してもフレームレートは25fpsに固定、解像度は撮影カメラの設定で変わるようですが、ビットレートは勝手に調整されるようです。

基本的な話ですが、動画の質は主に3つの要素で決まるようです。解像度、フレームレート、ビットレート です。解像度は静止画と同じで、縦、横の画素数です。いわゆる4KとかFull HD,HDとか言っているものです。フレームレートとは、1秒間に何フレーム使うか(何枚の絵を使うか)です。つまり、値が大きいほど滑らかに動く映像になります。最後のビットレート は動画が1秒間に何ビットのデータでできているかを示します。つまりビットレートが大きいほど、情報量が多い、つまり綺麗な映像になります。

今回の映像はHD画質、つまり1280×720ピクセルで撮っています。ビットレートは3000kbs、フレームレートは30fpsです。ただし、Zoomでの中継ではビットレートは自動調整、フレームレートは25fpsになるようです。録画を見ていただいた方は元のデータ、つまりより高画質でご覧いただけたと思います。

作業者目線で撮る方法

webcam1の設置に苦労しました。作業者視線で、上から見る映像を撮りたかったからです。いろいろ試行錯誤したのですが、最終的に採用したのはこの方法です。

スチームの水タンク吊りポールに、両端クリップをつけて、その先にwebcamを固定しています。作業者視線になる向きで設置しているところがポイントです。ローテクで見た目に美しいものではないですが、これが一番目的に叶いました。大手電気用品量販店でも探しましたが、カメラコーナーにあるものは立派ですが、価格もかなり高い。Amazonでは安い機材がいっぱいありますが、どれが良いものか判断がつかない。一つ新たに買った機材もありましたが、思ったような使い勝手ではなく、結局本番では使用しませんでした。

手持ちカメラについて

webcam2はほとんど手持ちで撮っていました。揺れるので酔うような映像だったかもしれませんが、固定器具を使うと自由度が減って動かしにくい。本当はスタビライザーのようなものを使うのが良いのかもしれません。

あともう一点。webcamは撮影者が、カメラと共に画面をモニタリングしながら撮れません。pcの画面を見ればわかるのですが、カメラと共にモニターがないとどうしても不便です。手持ちのスマホにPCの画面をミラーリングしながらというのも試しましたが、pcリソースを圧迫するのが気になってあまり使いませんでした。できれば手持ちのカメラはモニター付きのものが好ましいと感じました。

logicoolのカメラ設定について

後述しますが、今回Macを使っています。logicoolのカメラは一見Macではコントロールできないように見えますが、実は公式の設定アプリがあります。

logicool camera settingsダウンロードページ

ダウンロードページがとても分かりにくいところにありますが、何故でしょう?ちなみにWindowsを使っている人は問題なく設定できていると思います。Macではこのソフトをインストールしないと操作できません。特にフォーカスが途中でおかしくなったり、輝度設定が狂ったりすることがしばしばあるので、必須なツールだと思います。また、階調設定の問題なのか、どうしてもグレーの布地が黒つぶれし、白いものが白飛びしがちです。この調整はまだまだ課題です。なおこのアプリ、複数カメラを接続している場合、それぞれのカメラごとに設定できます。しかし、カメラを切り替えるたびに画角が「標準」モードに強制されます。ワイドに設定していると、突然両端が黒く切れてしまいます。この点、使い勝手が悪いので、注意が必要です。

パソコンについて

今回使用しているpcは15インチのMacBook Proです。CPUはcore i7 2.2GHzの6コア、メモリ32GB、GPUはIntel UHD 630 1536MBとAMD Radeon Pro 560X 4GBです。少し前のモデルではありますが、今でも十分なスペックかと思います。

実はこのpcですが、OSはWindowsも乗っています。BootCampでmacOSと切り替えて使っています。今回、Windowsでの使用も検討しましたが、最終的にはmacOSで使いました。

どうしてMacをあえてのWindowsで使用しようとしたのかと言いますと、実はMacは一部のwebcamを認識しなかったりします。今回、当初は前述のlogicoolのwebcam1台と、movioというwebcamを使う予定でした。後者のカメラはMacでは認識せず、Windowsでは認識しました。このためWindowsを使おうと思ったわけです。また、logicoolのカメラもWindowsの方が調整が簡単でした。

順調にWindowsで環境を整えていたのですが、ここで問題が生じます。なんとBootcampで動かすWindowsではBluetoothのマイクを認識しないのです。いくつかのメーカーのBluetoothヘッドセットを試したのですが、音は聞こえるものの、マイク機能は使えませんでした。と、いうわけでまたmacOSに戻ることとなったのです。ちなみにMacを使うかWindowsを使うか、の悩みはこの後も続きます。それはまた別のお話ですが。

パソコンのスペックですが、使い方によりますが、今回のように使う場合はハイスペックなものが好ましいと思います。複数のカメラ映像を高画質で録画しながら、放送する、となるとCPUもGPUもそれなりに駆使することになります。実際今回使い方にも問題があったのですが、映像を処理しきれなくなったのか、映像と音声が合わず、映像が遅延する現象が見られるケースがありました。

キャプチャーソフト

パソコンの話の続きとして、お話ししておかなければいけないことがあります。今回webcamの映像、マイクの音をそのままZoomアプリに入れているわけではありません。OBS Studioというオープンソースのビデオ録画、ライブ中継用のソフトウェアがあります。このソフトウェアは、主にゲームのライブ中継で使われているそうです。複数の映像、画面キャプチャー、音源を統一的にコントロールできます。ピクチャーインピクチャー(映像の中に別の映像を載せる)や画面上に文字を表示したりすることも簡単にできます。音源も複数管理できます。使いこなすとちょっとしたコントロールセンター気分です。

特に今回このツールの導入を決断した理由は、録画機能にあります。Zoomでも録画できるのですが、前述の通り、ビットレートとフレームレートがコントロールできません。Zoomでの録画もそこそこの質ではあるのですが、少しでも綺麗なものを撮りたいということで、採用しました。

放送していない映像を確認したり、調整したりできるところがとても便利です。ただし、一点問題があります。このソフトを使って録画したデータは、少なくともMacではとても編集しにくいデータになるようです。例えばQuickTime Playerで再生する際も動作が遅くなりますし、iMovieでは色がおかしくなりました。また、Adobe Premiere proでの編集動作も遅く、エンコーディングは12時間くらいかかりました。確かに大きなデータではありますが、pcのスペック等を考えると時間がかかりすぎです。感覚的には20分あれば十分終わる程度のデータだと思います。

この点、Adobeのサポートに質問してみました。するとOBS Studioで作った録画データに問題があるのではないかという話でした。一旦別のソフトウェアで変換してから、premiereに取り込めば問題なく操作できる、という話でした。その変換用のソフトウェアというのがHandBrake。確かにこれで変換すると問題なく処理できるデータになりました。

このような設定で変換、エンコードしています。

上のスクリーンショットではsuperHQでエンコードしています。FastとHQの差は若干感じますが、superHQまでは不要かもしれません。

放送データのやり取りを図示します。

OBS Studioに入力した映像データ、音声データをそれぞれ一本化し、Virtual Camera、VB-Cableを経由してZoomアプリに入力しています。また、録画自体はOBS Studioで行って、画質のコントロールをしています。この時OBS Studioではハードウェアエンコーダを使ってGPUによる処理を行なっています。おかげでCPUを圧迫することなく、パソコンは快適に動きます。

ただし、ここで外部ディスプレイに接続したりすると少し動画が怪しくなるようです。4Kのテレビでモニタリングすると、映像に遅延が生じました。

また、これはMac特有の問題かと思いますが、USB-C Digital AV Multiportアダプタを使って、このUSBポートに機器を接続、さらにACアダプターを同時に接続すると、Mac本体の充電ができなくなりました。おそらく、機器(webcam2台とマイク1台)に取られる電力と、本体で消費している電力の総量を上回ってしまうのだと思います。Mac本体のUSBポートに直接接続すれば、充電されるようになりました。

この件があってから、不安解消のため、セルフパワーのUSBハブを導入して機器を接続するように変えました。

Amazonだと安いんですね…。これを使うと接続しているUSB機器への給電がハブから行われるようになるので、本体の電力を消費しません。長くなりましたが、キャプチャーソフトとその周りの機器の話はこんなところです。

ライティングについて

ライティングはを基本的にデスクライトを使用しました。ただ、これを直接当てるとテカリが出て部分的に白飛びしてしまいます。ディフューザーとして布をかぶせて軽減しました。

でもまだ改善の余地がありますね。ライトはきちんとしたものを購入した方が良さそうです。

マイクについて

マイクはSONYのECM-PCV80Uを使っています。

webcam(C920)のマイクで音質的に問題はないのですが、カメラの設置場所は片方は頭上、片方は手持ちで、音を拾うのに動かしにくいので別に用意しました。実際は別に用意しなくてもよかったかな、という気もしています。頭上のwebcamのマイクでも十分音は拾えました。

当初はピンマイクを使用する予定でした。作業の邪魔にならないよう、Bluetoothで接続するものが良いと思っていました。しかし、ちゃんとしたものは価格が高い。3万円前後くらいでしょうか。

そこでスマホ等で使用するような安いワイヤレスのヘッドセットをいくつか購入してみたのですが、音の質の悪さ(モノラルでこもったような音)がとても気になり、聞き苦しいものでした。電話で使用するには良いかもしれませんが、放送に使うにはちょっと質が悪すぎると感じました。

ただ、今回のSONYのマイクも、webcamのマイクも周りの音を拾ってしまうので、スタッフはできるだけ喋らないように、周囲の音も出さないよう気をつけなければなりません。できることなら話者の声だけ拾うようなピンマイクが用意できた方が好ましいと思います。

なお、音のノイズ処理、増幅処理をOBS Studioのフィルタ機能で行っています。様々な処理ができるので、とても便利です。

今後機材で改善したいのは、まずはライティングです。その他も、本格的な放送をするにはモニタリングできるカメラを一台は欲しいと感じます。通常のビデオカメラを使ってキャプチャー機器を通してpcに入力するなどの機構の導入でしょうか。

webcamの白飛び、黒つぶれ問題もなんとかできないものかと思います。ライティングを工夫すれば改善できるのか、もしくは何か白と黒の基準みたいなものを画面に入れるようにすれば改善できるのか。設定アプリでの調整には限界を感じます。標準とワイドの切り替えが強制される問題もありますし。

まずはこのようにオンラインセミナーの一歩を踏み出しました。課題は多々ありますが、とても大きな可能性を感じています。今回募集人数ギリギリの100人近い方に参加していただきました。日本全国だけでなく、アメリカから参加していただいた方もいらっしゃいます。地理的な問題がなく、どこにいても参加できる便利さ。そして、リアルなセミナーと違って、座席位置による視界の良し悪しの問題がありません。通信状況による画質の問題はあるにせよ、高画質の録画を後で見ることもできる。気になったところは繰り返し見ることもできる。さらに気軽に講師に質問もできる(リアルな現場で声を上げるより、テキストメッセージなどの手段を使えばもっと気軽に聴けると思います)。うまく使うと今までよりももっと充実したセミナーとなるのではないでしょうか。

逆に今後は対面でのセミナーについてもっと質を高めて行かなければならない気がしています。対面でしかできないことにもっと注力すべきかと。そもそも対面でしかできないことは何か、を突き詰めることから始めた方が良いかもしれません。

今後も新しい試みにチャレンジしていきたいと思います。ぜひ皆さま引き続きご覧いただければと思っております。よろしくお願いいたします。